体や顔、指などに突然現れる赤いできもの。
鏡を見て不安になったり、「これ、何だろう?」と気になったりした経験はありませんか?赤いできものには、ニキビや虫刺されのような一時的なものから、炎症を伴うもの、中には病院での治療が必要な病気まで、さまざまな原因が考えられます。
「痛い」「かゆい」といった症状がある場合もあれば、特に症状がないのに「治らない」「大きくなってきた」と悩むケースもあるでしょう。この記事では、赤いできものの原因として考えられる代表的な種類や、症状・部位ごとの特徴、そしてご自身で判断せずに皮膚科を受診すべき目安について詳しく解説します。この記事を読んで、赤いできものに対する正しい知識を身につけ、適切な対応をすることで、皮膚の健康を守りましょう。
その赤いできもの、原因は?考えられる種類【症状別】
赤いできものと一口に言っても、その正体は多岐にわたります。ここでは、赤いできものの代表的な種類をいくつかご紹介します。それぞれの特徴を知ることで、ご自身の赤いできものがどれに当てはまるか、ある程度の推測はできるかもしれませんが、あくまで自己判断は危険です。正確な診断のためには、必ず皮膚科医の診察を受けましょう。
赤いできもの:よくある皮膚の疾患
日常的によく見られる、赤いできものを伴う皮膚の疾患について解説します。
ニキビ・赤ニキビ
特に若い方に多く見られますが、大人になってからもできることがあります。毛穴に皮脂が詰まり、アクネ菌が増殖して炎症を起こした状態がニキビです。赤いニキビは炎症が進んだ状態で、触ると痛みを感じることがあります。顔はもちろん、胸や背中にもできやすいです。
毛のう炎
毛穴の根元(毛包・毛嚢)に細菌が感染して炎症を起こした状態です。小さな赤いプツプツができ、中央に毛穴が見えることがあります。軽い痛みや痒みを伴うことが多く、カミソリ負けしやすい部位や、摩擦が多い部位、毛深い部分にできやすいです。
接触皮膚炎(かぶれ)
特定の物質が皮膚に触れることで起こる炎症です。原因物質に触れた部分に一致して、赤み、痒み、ブツブツ、水ぶくれなどが現れます。洗剤、化粧品、金属(アクセサリー)、植物などが原因となることが多いです。原因物質が分かれば、それらを避けることで改善します。
湿疹
皮膚の炎症全般を指す言葉で、原因は非常に多様です。アレルギー、乾燥、刺激、汗などが原因となり、赤み、痒み、小さなブツブツ、ジュクジュク、カサカサなど、様々な症状が現れます。体のあらゆる部位にでき、慢性化しやすい特徴があります。
虫刺され
蚊、ダニ、ノミ、アブ、ブヨなどの虫に刺された箇所が、アレルギー反応や刺激によって赤く腫れ、強い痒みを伴います。中心に刺し口が見えることもあります。腫れ方や痒みの程度は、刺された虫の種類や個人の体質によって異なります。
粉瘤(アテローマ)の炎症
粉瘤は、皮膚の下にできる袋状の良性腫瘍で、本来は皮膚色のしこりとして触れることが多いです。しかし、袋の中に溜まった皮脂や角質に細菌が感染すると、炎症を起こして赤く腫れ上がり、痛みを伴います。この炎症を起こした状態を「炎症性粉瘤」と呼び、赤いできものとして認識されます。炎症がひどくなると、膿が出ることがあります。
血管腫(ルビースポットなど)
皮膚の毛細血管が異常に増殖してできる良性腫瘍です。「老人性血管腫」や「チェリー血管腫」「ルビースポット」とも呼ばれ、鮮やかな赤い点や小さな盛り上がりとして現れます。加齢に伴って増えることが多く、痛みや痒みなどの自覚症状はほとんどありません。基本的には治療の必要はありませんが、見た目が気になる場合は皮膚科で治療が可能です。
細菌や真菌による感染症
赤いできものが、細菌や真菌(カビ)といった病原体の感染によって引き起こされる場合もあります。
- 細菌感染症:
- 丹毒・蜂窩織炎(ほうかしきえん): 皮膚の深い層や皮下組織に細菌が感染して起こる炎症です。境界が比較的はっきりした、急激な赤み、腫れ、熱感、強い痛みを伴います。発熱や倦怠感などの全身症状が出ることもあります。
- 伝染性膿痂疹(とびひ): 主に子供に多い、細菌感染による皮膚の病気です。小さな水ぶくれや膿疱ができ、それが破れて浸出液が出ると、その液が触れたところに次々と感染が広がります(飛び火する様子から「とびひ」と呼ばれます)。赤みやかゆみを伴います。
- 真菌(カビ)感染症:
- 白癬(はくせん): いわゆる水虫やたむしです。足だけでなく、股部(いんきんたむし)や体(ぜにたむし)にもでき、赤み、痒み、皮むけなどが環状に広がる特徴があります。
- マラセチア毛包炎: 皮膚の常在真菌であるマラセチア菌が毛穴で異常繁殖することで起こります。胸や背中、二の腕などに小さな赤いブツブツがたくさんできるのが特徴で、痒みを伴うこともあります。ニキビと間違えられやすいですが、原因菌が異なります。
その他の赤いできもの(いぼ、脂漏性角化症など)
上記以外にも、赤いできものとして現れる可能性のある皮膚病変があります。
- いぼ(ウイルス性疣贅): ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって皮膚の表面が盛り上がる病気です。通常は肌色や茶色っぽいことが多いですが、炎症を起こしたり、摩擦を受けたりすることで赤みを帯びることがあります。表面がザラザラしているのが特徴です。
- 脂漏性角化症(老人性いぼ): 加齢によってできる、茶色や黒っぽい盛り上がりです。顔や体によくできます。これも摩擦や炎症などで一時的に赤みを帯びることがあります。
- ホクロ(母斑): 良性の色素性病変ですが、稀に赤いホクロ(血管腫などと混同されることも)があったり、ホクロ自体が出血や炎症で赤くなることがあります。また、形がいびつ、大きさが急に変わる、色むらがあるなどの変化を伴う赤い・または赤黒いできものの場合は、悪性腫瘍(メラノーマなど)の可能性もゼロではないため注意が必要です。
赤いできもの:症状から考えられる原因
赤いできものにどのような症状が伴うかによって、原因をある程度絞り込むことができます。
「痛い」赤いできものの原因
痛みを伴う赤いできものは、炎症が強く起きている可能性が高いです。具体的には、以下のような疾患が考えられます。
- 炎症性ニキビ(赤ニキビ): 特に大きくて化膿しているもの。
- 毛のう炎: 毛穴の炎症によるもの。
- 炎症性粉瘤: 粉瘤に細菌が感染して赤く腫れ上がった状態。強い痛みを伴うことが多いです。
- 丹毒・蜂窩織炎: 細菌感染による広範囲の炎症。ズキズキとした痛みを伴います。
- 帯状疱疹の初期: ウイルスによる神経の炎症。皮膚に赤いブツブツや水ぶくれができる前に、チクチク、ピリピリといった神経痛のような痛みが先行することがあります。
「痛くない」「かゆくない」赤いできものの原因
痛みも痒みもない赤いできものは、必ずしも炎症を伴わないものが考えられます。
- 血管腫(ルビースポットなど): 加齢性の血管の増殖。症状はありません。
- 粉瘤(炎症を起こしていないもの): 通常は皮膚色のしこりですが、大きさや場所によっては赤みがかって見えることも。痛みや痒みはありません。
- 良性腫瘍: 種類によっては特に症状を伴わないものがあります。
- 悪性腫瘍の初期: メラノーマなどの悪性腫瘍も、初期には痛みや痒みがないことがあります。形や色の変化に注意が必要です。
「治らない」赤いできものの原因
数週間経っても改善が見られない、あるいは悪化していくような赤いできものは、自己判断で放置せず、必ず専門医に相談すべきです。
- 慢性的な湿疹: 湿疹は慢性化しやすく、原因を取り除かない限り治りにくいことがあります。
- 炎症性粉瘤: 炎症を抑えても、原因である粉瘤の袋自体を取り除かないと再発しやすいです。
- 真菌感染症: 市販薬では効果がない場合や、診断が間違っていると治りません。
- 良性・悪性腫瘍: 腫瘍性の病変は自然に消えることはほとんどありません。
- 診断・治療が適切でない場合: 原因が特定できていない、あるいは市販薬で間違った対処をしている場合など。
- 自己判断による放置: 早期に治療すれば治りやすい病気も、放置することで悪化・慢性化することがあります。
赤いできものに「膿」がある場合
赤いできものの中央から黄色っぽい膿が出ている、あるいは触ると膿が溜まっているように感じる場合、細菌感染が原因である可能性が高いです。
- 炎症性ニキビ(化膿ニキビ): ニキビの中に膿が溜まった状態。
- 毛のう炎: 重症化すると膿を持つことがあります。
- 炎症性粉瘤: 最も膿を伴いやすいできものの一つ。炎症がひどくなると、自然に破れて大量の膿が出ることがあります。
- 伝染性膿痂疹(とびひ): 水ぶくれが破れて膿が出たり、かさぶたになったりします。
膿は細菌の塊であり、周囲への感染源となる可能性もあります。膿を伴う赤いできものは、医療機関での適切な処置と抗菌薬による治療が必要になることが多いです。自分で無理に潰すと悪化したり、痕になったりするリスクがあるため避けましょう。
赤いできもの:できやすい部位と特徴
赤いできものは体の様々な場所にできますが、部位によってできやすい原因が異なります。
顔にできる赤いできもの
顔は皮脂腺が多く、外部からの刺激を受けやすい部位です。
- ニキビ: 特にTゾーンやおでこ、あごなどにできやすいです。
- 毛のう炎: 髭剃り後や、毛穴の詰まりやすい箇所にできることがあります。
- 接触皮膚炎: 化粧品、洗顔料、紫外線吸収剤などが原因で、塗った部分に赤みやかぶれが生じることがあります。
- 湿疹: 乾燥、摩擦、ストレスなどが原因で顔に湿疹ができることがあります(脂漏性皮膚炎など)。
- 血管腫: 加齢に伴い、顔や首に小さな赤い点(ルビースポット)が増えることがあります。
指にできる赤いできもの
指は水仕事や外部刺激に常にさらされているため、皮膚トラブルが多い部位です。
- 湿疹: 洗剤や水仕事による乾燥・刺激で、指先に赤み、痒み、カサつき、時には水ぶくれができることがあります(手湿疹)。
- 接触皮膚炎: 金属アレルギー(指輪など)や、特定の植物、化学物質に触れることでかぶれが生じます。
- いぼ(尋常性疣贅): 指先や指の腹、爪の周りなどに、表面がザラザラした盛り上がりができます。摩擦などで赤みを帯びることがあります。
- 虫刺され: 指先も蚊やダニなどに刺されることがあります。
体(背中、胸など)にできる赤いできもの
体幹部も赤いできものができやすい部位です。
- ニキビ: 背中や胸は皮脂腺が多く、ニキビやニキビ痕ができやすい部位です。
- 毛のう炎: 背中や胸、お尻など、服の摩擦が多い部分や蒸れやすい部分にできます。
- マラセチア毛包炎: 特に夏場など、汗をかきやすい時期に、胸や背中に小さな赤いプツプツがたくさんできます。
- 湿疹: アトピー性皮膚炎など、体全体に湿疹ができることがあります。
- 虫刺され: 就寝中にダニやノミに刺されて、体幹部に赤い痒いブツブツができることがあります。
- 脂漏性角化症: 加齢に伴い、背中や胸にも茶色〜黒っぽい盛り上がり(老人性いぼ)ができますが、初期や炎症時には赤みを帯びることもあります。
- 血管腫: 体幹部にもルビースポットがたくさんできることがあります。
部位によってできやすい病変は異なりますが、複数の原因が同時に存在することや、同じ病変でも部位によって症状が異なることもあります。
赤いできもの:自己判断せず病院へ相談【受診目安】
赤いできものは多くの種類があり、見た目だけでは原因を特定するのが難しいことが多いです。また、中には早期の治療が必要な病気が隠れている可能性もゼロではありません。自己判断で市販薬を使ったり、放置したりすることで、症状が悪化したり、診断が遅れたりするリスクがあります。
どんな赤いできものは皮膚科を受診すべき?
以下のいずれかに当てはまる赤いできものは、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
症状や状態 | 受診を検討すべき理由 |
---|---|
痛みが強い、悪化する | 強い炎症や感染が起きている可能性が高いです。 |
赤みや腫れが広がる | 感染症(丹毒、蜂窩織炎、とびひなど)が進行している可能性があります。 |
高熱やだるさを伴う | 全身に感染が広がっている、あるいは他の病気が隠れている可能性があります。 |
膿が出ている、ジュクジュクする | 細菌感染の可能性が高く、適切な処置と抗菌薬が必要なことが多いです。 |
かゆみがひどく、眠れない | 日常生活に支障をきたしている場合は、適切な治療で症状を和らげる必要があります。 |
短期間で大きくなった | 腫瘍性の病変(良性・悪性含む)の可能性があり、専門的な診断が必要です。 |
形がいびつ、境界が不明瞭、色むら | 悪性腫瘍(メラノーマなど)の可能性を示唆するサインかもしれません。 |
市販薬を使っても改善しない | 診断が違う、または市販薬では効果のない病気である可能性があります。 |
原因が全く分からない | 適切な診断に基づいた治療が必要です。 |
不安を感じる | 不安を解消し、正しい知識と治療法を得るためにも受診は大切です。 |
お子さんにできた場合 | 子供は症状が急激に進行しやすい傾向があります。 |
免疫抑制剤を服用中など、免疫が低下している方 | 感染症などが重症化しやすいリスクがあります。 |
これらの目安を参考に、気になる赤いできものがあれば迷わず皮膚科医に相談しましょう。
病院での診断と治療法
皮膚科を受診すると、医師はまず患者さんから症状について詳しく聞き取り(問診)、できものを目で見て(視診)、触って(触診)診断を行います。これにより、多くの場合は診断がつきます。
診断のために、必要に応じて以下の検査を行うこともあります。
- ダーモスコピー検査: 特殊な拡大鏡を使ってできものを観察する検査です。ホクロや腫瘍などの鑑別に有用です。
- 皮膚生検: できものの一部、または全部を切り取って顕微鏡で詳しく調べる検査です。確定診断に不可欠な場合があります。
- 培養検査: 膿や病変部の一部を採取し、原因となっている細菌や真菌を特定する検査です。
- アレルギー検査: 接触皮膚炎などが疑われる場合に、原因物質を特定するために行われることがあります。
診断が確定したら、原因に応じた適切な治療が行われます。
- 細菌感染: 抗菌薬(塗り薬、飲み薬)
- 真菌感染: 抗真菌薬(塗り薬、飲み薬)
- 炎症(湿疹、かぶれ): ステロイド外用薬、抗ヒスタミン薬(内服薬)
- ニキビ: 抗菌薬、過酸化ベンゾイル、アダパレン、抗生物質など、ニキビの状態に応じた様々な外用薬や内服薬
- 粉瘤: 炎症がある場合は、切開して膿を出す処置や抗菌薬による治療。炎症が治まってから、手術で粉瘤の袋ごと摘出する根治治療。
- 血管腫: 基本的に治療不要。美容目的でレーザー治療などを行う場合がある。
- いぼ: 液体窒素療法(凍結療法)、サリチル酸製剤の外用、レーザー治療、手術など。
自己判断で誤ったケアをしたり、市販薬で様子を見すぎたりすると、症状が長引いたり悪化したりする可能性があります。皮膚科医の正確な診断と指導のもと、適切な治療を受けることが大切です。
市販薬での対処は可能か?
軽い赤いできものの場合、市販薬での対処を検討することもあるかもしれません。例えば、虫刺されによる痒みや、乾燥による軽い湿疹など、原因が比較的はっきりしており、症状も軽度な場合は、薬局で手に入る市販薬(ステロイド外用薬、抗ヒスタミン外用薬など)を使用することで症状が和らぐことがあります。
ただし、以下の点に十分注意が必要です。
- 原因が不明な場合: 自己判断で市販薬を使用すると、原因に応じた適切な治療ができないだけでなく、かえって症状を悪化させたり、原因の特定を難しくしたりする可能性があります。
- 症状が重い、悪化している場合: 市販薬で効果が見られない場合や、症状がどんどんひどくなる場合は、市販薬では対処できない病気である可能性が高いです。
- 長期間続く場合: 市販薬を使い続けても治らない場合は、慢性的な病気や、市販薬では治せない病気が考えられます。
- 化膿している、膿が出ている場合: 細菌感染が強く疑われるため、抗菌薬による治療が必要となることがほとんどです。市販薬では十分な効果が得られないことが多いです。
安易な自己判断は危険です。特に、上記の「受診目安」に当てはまる場合は、市販薬に頼らず、できるだけ早く皮膚科を受診しましょう。市販薬を使う場合も、薬剤師に相談し、使用上の注意をよく読んで、決められた期間や用量を守ることが重要です。
まとめ|赤いできものに悩んだら皮膚科医へ相談を
体や顔にできる赤いできものには、ニキビや湿疹、虫刺されといった身近なものから、細菌や真菌による感染症、さらには腫瘍性の病変まで、非常に多くの種類があります。それぞれの原因や特徴は異なりますが、見た目だけで自己判断するのは難しく、間違った対処をしてしまうと症状が悪化したり、治るのが遅れたりする可能性があります。
特に、痛みが強い、範囲が広がっている、膿が出ている、短期間で大きくなったなど、気になる症状がある場合は、迷わず皮膚科を受診することが大切です。皮膚科医であれば、専門的な知識と経験に基づき、できものの種類を正確に診断し、原因に合わせた適切な治療法を提案してくれます。
この記事が、赤いできものに悩む方の不安を少しでも和らげ、早期に適切な医療につながる一助となれば幸いです。気になる赤いできものがあれば、まずは皮膚科医に相談してみましょう。
【免責事項】
この記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療法を推奨するものではありません。ご自身の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。この記事の情報に基づいて行った行為によって生じたいかなる結果についても、当方は一切の責任を負いません。