広頚筋ボトックスの効果とデメリット|首のしわ・たるみ改善と失敗リスクを解説

年齢を重ねるにつれて気になる、首のしわやフェイスラインのもたつき。こうした悩みの原因の一つが「広頚筋(こうけいきん)」という首の筋肉の働きであることはご存知でしょうか。

広頚筋ボトックスは、この筋肉の緊張を和らげることで、首の縦じわや横じわを目立たなくし、フェイスラインをすっきりと引き締める効果が期待できる人気の美容施術です。

この記事では、広頚筋ボトックスの効果から、気になるデメリットや失敗のリスク、費用相場、クリニック選びのポイントまで、専門的な観点から詳しく解説します。施術を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

広頚筋ボトックスとは?期待できる効果

広頚筋とは、顎下から鎖骨あたりまで、首の表面を覆うように存在する薄い筋肉です。この筋肉は、口角を下に引くような表情を作るときに使われます。年齢とともにこの広頚筋が過剰に収縮したり、硬くなったりすると、様々なエイジングサインの原因となります。

広頚筋ボトックスは、「ボツリヌストキシン」という成分を主とした薬剤を注射する施術です。ボツリヌストキシンには、筋肉の緊張を一時的に緩める作用があります。この作用を広頚筋に応用することで、以下のような効果が期待できます。

首の縦じわ・横じわ改善

力を入れたときや喋るときに首に浮かび上がる「縦じわ(ターキーネック)」は、広頚筋の過剰な収縮が主な原因です。広頚筋ボトックスを注入することで、この収縮を和らげ、筋張った首をなめらかで若々しい印象に導きます。

また、広頚筋の緊張が緩和されると、皮膚表面の細かな「横じわ」も浅くなり、目立ちにくくなる効果が期待できます。

フェイスラインの引き締め(ネフェルティティリフト)

広頚筋は、フェイスラインの皮膚を下に引っ張る働きも持っています。この下向きの力が強いと、フェイスラインがもたついたり、口角が下がって見えたりする原因になります。

広頚筋ボトックスによってこの下向きの力を弱めることで、相対的に顔を引き上げる筋肉の働きが優位になります。その結果、顎のラインがシャープになり、フェイスラインがリフトアップされたようなすっきりとした印象に。この効果は、古代エジプトの美しい王妃にちなんで「ネフェルティティリフト」とも呼ばれています。

肩こりへの影響

広頚筋は、肩こりの原因となる僧帽筋(そうぼうきん)とも近接しています。そのため、広頚筋ボトックスの薬剤が周囲に浸透することで、肩の上部の緊張が和らぎ、副次的に肩こりが楽になったと感じる方もいます。ただし、これは本来の目的ではないため、効果には個人差が大きい点に注意が必要です。

広頚筋ボトックスのビフォーアフター事例

【症例】40代女性・首の縦じわとフェイスラインのもたつきが悩み

以前から年齢とともに首の縦筋が目立つようになり、フェイスラインもぼんやりしてきたことが悩みでした。カウンセリングで広頚筋ボトックスを提案され、施術を決意。

【施術後】
施術から約1週間後、力を入れても首の筋がほとんど浮かなくなり、なめらかな印象に。気にしていたフェイスラインも引き締まり、横顔に自信が持てるようになりました。周りからは「痩せた?」「なんだかスッキリしたね」と言われることが増えました。

※上記はフィクションであり、効果の現れ方には個人差があります。

広頚筋ボトックスのデメリット・リスクと失敗

手軽に受けられる印象のある広頚筋ボトックスですが、デメリットやリスクも存在します。安心して施術を受けるために、事前にしっかりと理解しておきましょう。

失敗例とその原因

広頚筋ボトックスにおける失敗の多くは、医師の技術力や経験不足が原因で起こります。

  • 表情が不自然になる:薬剤の注入量が多すぎたり、効かせたくない筋肉にまで作用したりすると、笑顔が引きつるなど不自然な表情になることがあります。
  • 飲み込みにくさ・声のかすれ:首の深い層にある嚥下(えんげ)や発声に関わる筋肉にまで薬剤が作用してしまうと、一時的に食べ物が飲み込みにくくなったり、声がかすれたりするリスクがあります。
  • 効果が感じられない:注入量が少なすぎたり、注入箇所が適切でなかったりすると、期待した効果が得られない場合があります。

これらの失敗を避けるためには、首周りの解剖学を熟知し、適切な量と位置に正確に注入できる医師を選ぶことが極めて重要です。

ダウンタイムと注意点

施術後のダウンタイムは比較的短いですが、以下のような症状が現れることがあります。

  • 内出血:注射針が細かい血管に当たると、点状の内出血が起きることがあります。通常1〜2週間程度で自然に消えます。
  • 腫れ・赤み:注射部位に軽い腫れや赤みが出ることがありますが、数時間〜数日で落ち着くことがほとんどです。
  • 痛み:チクっとした軽い痛みが数日続く場合があります。

【施術後の注意点】

  • 施術当日は、激しい運動、長時間の入浴、サウナ、飲酒など血行を促進する行為は避けてください。
  • 注入部位を強くマッサージしたり、こすったりしないでください。薬剤が意図しない範囲に広がる可能性があります。
  • 施術後3ヶ月は、妊娠を避けることが推奨されています。

施術を受けられないケース

以下に該当する方は、広頚筋ボトックスの施術を受けられない可能性があります。必ず事前に医師に相談してください。

  • 妊娠中、授乳中、または妊娠の可能性がある方
  • 過去にボツリヌストキシン製剤でアレルギー反応が出た方
  • 神経筋接合部の疾患(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群など)をお持ちの方
  • 施術部位に感染や皮膚疾患がある方
  • 特定の抗生物質などを服用中の方

広頚筋ボトックスの施術箇所と必要な単位数

施術箇所について

広頚筋ボトックスは、顎下から首の両側にかけて広がる広頚筋全体に、まんべんなく注入します。医師が筋肉の動きや強さを見極めながら、数十箇所に細かく少量ずつ注射していくのが一般的です。これにより、自然な仕上がりを目指します。

単位数の目安

使用する薬剤の単位数は、個人の筋肉の強さや改善したい度合いによって大きく異なります。

  • 一般的な目安:20〜50単位

筋肉が発達している方や、よりはっきりとした効果を求める場合は、これ以上の単位数が必要になることもあります。カウンセリング時に、医師があなたの首の状態を診察し、最適な単位数を提案してくれます。

広頚筋ボトックスの費用相場と持続期間・施術頻度

費用の目安

広頚筋ボトックスは自由診療のため、クリニックによって料金設定が異なります。

施術内容 費用相場
広頚筋ボトックス(ネフェルティティリフト) 30,000円 ~ 100,000円程度

費用は、使用するボツリヌストキシン製剤の種類(アラガン社のボトックスビスタ®か、韓国製などの後発品か)や、注入する単位数によって変動します。

効果の持続期間と推奨される施術頻度

  • 効果の持続期間:一般的に3〜4ヶ月程度です。長い方で半年ほど持続することもあります。
  • 推奨される施術頻度:効果を維持するためには、4〜6ヶ月に1回のペースで継続して施術を受けることが推奨されます。

繰り返し施術を受けることで、筋肉そのものが少しずつ萎縮し、効果の持続期間が長くなったり、より少ない単位数で効果が得られたりする傾向があります。

広頚筋ボトックスを受けるクリニックの選び方

広頚筋ボトックスの満足度は、クリニック選びにかかっていると言っても過言ではありません。以下のポイントを参考に、慎重に選びましょう。

医師の経験と技術

最も重要なのは、医師のスキルです。

  • ボトックス注射の症例数が豊富か
  • 首周りの複雑な解剖学を熟知しているか
  • 日本形成外科学会専門医や日本皮膚科学会専門医などの資格を持っているか
  • アラガン社が認定する「VST認定医」であるか

これらの点は、技術力を測る一つの指標となります。

料金体系とカウンセリング

安心して施術を受けるためには、料金と説明の透明性が不可欠です。

  • 料金体系が明確で、追加料金などについて事前に説明があるか
  • カウンセリングで、効果だけでなく、リスクやデメリットについても時間をかけて丁寧に説明してくれるか
  • あなたの悩みや希望を親身に聞いてくれるか

実績や口コミの確認

実際にそのクリニックで施術を受けた人の声は、貴重な情報源です。

  • クリニックの公式サイトやSNSで、広頚筋ボトックスの症例写真を確認する
  • Googleマップの口コミや美容医療の口コミサイトなどを参考に、リアルな評価をチェックする

ただし、口コミは個人の感想であるため、あくまで参考程度にとどめ、最終的にはご自身のカウンセリングでの印象を大切にしましょう。

広頚筋ボトックスに関するよくある質問

広頚筋ボトックスで首のしわは改善できますか?

はい、改善が期待できます。特に、首に力を入れたときに浮き出る「縦じわ」には高い効果を発揮します。また、皮膚表面の緊張が緩むことで「横じわ」が目立ちにくくなる効果も見込めます。ただし、深く刻まれてしまった横じわは、ヒアルロン酸注入など他の治療との併用が必要な場合もあります。

ボトックスをやらない方がいい場所はありますか?

表情を作る上で重要な筋肉(例:上まぶたを上げる筋肉、笑うときに使う筋肉の中心部など)への注射は、不自然な表情の原因となるため避けるべきです。広頚筋の場合も、嚥下や発声に関わる深層の筋肉に作用させないよう、浅い層に正確に注射する必要があります。信頼できる医師に任せることが重要です。

広頚筋のボトックス注射は何回くらい必要ですか?

1回の施術でも効果は実感できますが、効果は永久ではありません。効果を維持するためには、4〜6ヶ月に1回のペースで継続することが推奨されます。

首のボトックス注射は危ないですか?

適切な知識と技術を持つ医師が、正しい部位に適量を注入すれば、安全性の高い施術です。しかし、誤った方法で行うと、飲み込みにくさや声のかすれ、不自然な表情といったリスクを伴います。そのため、クリニック・医師選びが非常に重要になります。

効果はどれくらいで実感できますか?

個人差はありますが、一般的には施術後2〜3日後から徐々に効果が現れ始め、1〜2週間程度で効果が安定します。

施術中の痛みはありますか?

極細の注射針を使用するため、痛みはチクっとする程度です。痛みに弱い方のために、麻酔クリームや冷却などのオプションを用意しているクリニックもありますので、ご相談ください。

広頚筋ボトックスをやめたらどうなりますか?

効果が切れると、筋肉の働きが徐々に元に戻っていくだけです。やめたことで、施術前よりもしわが悪化したり、たるんだりすることはありませんのでご安心ください。

まとめ|広頚筋ボトックスで気になる首の悩みを解消

広頚筋ボトックスは、自分ではケアが難しい首の縦じわや横じわ、フェイスラインのもたつきといった悩みに、効果的にアプローチできる治療法です。施術時間も短く、ダウンタイムも比較的少ないため、多くの方が手軽に受けられるエイジングケアとして注目しています。

しかし、その手軽さの一方で、満足のいく結果を得るためには、首の解剖を熟知した経験豊富な医師による、正確な診断と施術が不可欠です。

この記事を参考に、まずは信頼できるクリニックでカウンセリングを受け、ご自身の悩みが広頚筋ボトックスで解決できるのか、どのようなリスクがあるのかをしっかり相談することから始めてみてはいかがでしょうか。


免責事項:本記事は広頚筋ボトックスに関する情報の提供を目的としており、医学的な診断やアドバイスに代わるものではありません。治療を検討される際には、必ず専門の医療機関を受診し、医師の診察と指導のもとで行ってください。