メトホルミンの正しい飲み方|いつ飲む?副作用や注意点を解説

メトホルミンは2型糖尿病の治療に広く用いられる薬ですが、医師から処方された際に「正しい飲み方が合っているか不安」「いつ飲むのが効果的なのだろう?」と疑問に思う方も少なくないでしょう。また、副作用や食事との関係など、気になる点も多いかもしれません。

この記事では、メトホルミンの基本的な飲み方やタイミング、副作用、そして服用中の様々な疑問について、分かりやすく解説します。正しい知識を身につけ、安心して治療を続けられるようにしましょう。

メトホルミンとは?薬の基本的な情報

メトホルミンは、「ビグアナイド薬」に分類される2型糖尿病の治療薬です。世界中で長年にわたり使用されており、糖尿病治療における中心的な薬剤の一つと位置づけられています。

インスリンの分泌を直接促すのではなく、主に肝臓での糖の生成を抑えたり、筋肉での糖の利用を促進したりすることで血糖値を下げるのが特徴です。そのため、単独での使用では低血糖を起こしにくいとされています。

メトホルミン 基本的な飲み方・タイミング

メトホルミンの効果を最大限に引き出し、副作用を軽減するためには、正しい飲み方を守ることが非常に重要です。

いつ飲む?食直前または食後

メトホルミンは、1日2〜3回、食直前または食後に服用するのが一般的です。

服用タイミングが食直前や食後に指定されることが多い主な理由は、吐き気や下痢、腹痛といった消化器系の副作用を軽減するためです。空腹時に服用するよりも、食事と一緒に摂ることで胃腸への負担が和らぎます。

食前と食後で効果に違いはある?

メトホルミンの血糖降下作用において、食前と食後で効果に明確な差はないとされています。大切なのは、胃腸への負担を考えて食事に合わせて服用することと、毎日決まった時間に飲み続けることです。医師や薬剤師から指示されたタイミングを守りましょう。

1日〇回の理由

メトホルミンを1日に2回や3回に分けて服用するのは、薬の血中濃度を一定の範囲に保ち、安定した効果を得るためです。1回で1日分をまとめて服用すると、血中濃度が急激に上昇し、副作用のリスクを高める可能性があります。

食事をしない場合の飲み方

自己判断で食事を抜いた場合、メトホルミンをどうすればよいか迷うことがあるかもしれません。食事を摂らないと、血糖値は通常よりも低い状態にあります。

基本的に、食事をしない場合はその回の服用は避けるのが一般的ですが、自己判断で中止したりせず、必ず事前に医師や薬剤師に確認してください。 特に、他の血糖降下薬と併用している場合は低血糖のリスクがあるため注意が必要です。

用量について

メトホルミンの用量は、患者さん一人ひとりの年齢、症状、血糖値の状態などに応じて医師が決定します。

[引用元1]によると、メトホルミンの投与は通常1日500mgから開始され、患者さんの状態に応じて徐々に増量し、維持量は通常750~1,500mg、最高投与量は1日2,250mgまでとされています。必ず医師の指示した用法・用量を厳守してください。効果を高めたいからといって、自己判断で量を増やしたり、他人の薬を服用したりすることは絶対にやめましょう。

メトホルミンの副作用と注意点

メトホルミンは比較的安全な薬とされていますが、副作用が起こる可能性もあります。特に注意すべき点について理解しておくことが大切です。

主な副作用(消化器症状など)

服用開始後に見られやすい副作用として、以下のような消化器症状があります。

  • 下痢
  • 吐き気、嘔吐
  • 食欲不振
  • 腹痛
  • 便秘
  • 腹部膨満感

これらの症状は、服用を続けるうちに体が慣れて軽減・消失することが多いですが、症状が辛い場合や長く続く場合は、我慢せずに医師や薬剤師に相談してください。

重大な副作用(乳酸アシドーシス)の初期症状

頻度は極めてまれですが、メトホルミンの最も注意すべき重大な副作用に乳酸アシドーシスがあります。これは、体内に乳酸が過剰に蓄積し、血液が酸性に傾くことで、重篤な状態に陥る可能性があるものです。

以下の初期症状に注意し、一つでも当てはまる場合は、直ちに服用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。

  • 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの激しい消化器症状
  • 原因不明の筋肉痛、倦怠感
  • 呼吸が速くなる、息苦しい
  • 意識がもうろうとする

乳酸アシドーシスのリスク要因と対策

乳酸アシドーシスは誰にでも起こるわけではなく、特定の条件下でリスクが高まります。

リスク要因 対策
脱水状態(発熱、下痢、嘔吐、食事ができない時など) [引用元1]が注意喚起しているように、脱水状態は乳酸アシドーシスのリスクを高めます。こまめな水分補給を心がける。脱水が疑われる場合は医師に相談し、必要に応じて休薬指示を受ける必要があります。
過度のアルコール摂取 服用期間中の飲酒は控えるか、医師に許可された範囲にする。乳酸アシドーシスのリスクを著しく高めるため、原則として控えるべきです。
腎機能・肝機能障害 [引用元2]が示すように、特にeGFRが30未満の腎機能障害患者への投与は禁忌とされています。該当する方は服用が禁忌、または慎重な投与が必要となるため、投与開始前には必ず腎機能評価が必要です。
ヨード造影剤の使用(CT検査など) [引用元1]や[引用元2]で指示されているように、CT検査などでヨード造影剤を使用する場合は、検査前後は一時的にメトホルミンの服用を中止する必要があります。必ず事前に医師に服用を伝えてください。特に[引用元2]では詳細な休薬プロトコルが示されています。
高齢者 生理機能が低下しているため、特に注意が必要。
心血管系・肺機能障害、重症感染症、手術前後、重篤な外傷 これらの状態は組織の酸素不足などを引き起こし、乳酸アシドーシスのリスクを高める可能性があります。[引用元1]でも禁忌・慎重投与が指示されています。

禁忌・服用できない人

以下に該当する方は、原則としてメトホルミンを服用できません。[引用元1]、[引用元2]など複数の情報源で禁忌事項が示されています。

  • 重度の腎機能障害のある方(特に[引用元2]が示すように、eGFRが30未満の場合は原則として禁忌とされています。)
  • 過去に乳酸アシドーシスになったことがある方([引用元1]で禁忌とされています。)
  • 重度の感染症、手術前後、重篤な外傷のある方
  • 心血管系や肺機能に重い障害のある方
  • 過度のアルコール摂取者
  • 妊婦または妊娠している可能性のある方、授乳中の方
  • その他、医師が不適当と判断した方

併用注意薬

他の薬と一緒に服用することで、作用が強まったり弱まったりすることがあります。特に血糖値を下げる他の薬や、腎臓に影響を与える薬などとの併用には注意が必要です。現在服用中の薬(市販薬やサプリメントを含む)は、すべて医師や薬剤師に伝えてください。

服用中に注意すべき飲食物(アルコールなど)

メトホルミン服用中の過度なアルコール(飲酒)は、乳酸アシドーシスのリスクを著しく高めるため、原則として控えるべきです。 飲酒の習慣がある方は、必ず事前に医師に相談し、その指示に従ってください。

メトホルミンの効果とメカニズム

メトホルミンがどのようにして血糖値を下げるのか、その仕組みと効果について解説します。

血糖値を下げるメカニズム

メトホルミンは、主に以下の3つの作用によって血糖値を改善します。

  • 肝臓での糖新生を抑制する:肝臓が血液中にブドウ糖を新たに作り出す働きを抑えます。
  • 末梢組織での糖利用を促進する:筋肉や脂肪組織が血液中のブドウ糖を取り込んで利用するのを助けます。
  • 小腸からの糖吸収を抑制する:食事から摂取した糖分の吸収を緩やかにします。

血糖値はどのくらい下がる?

血糖値の低下度合いは、元の血糖値や食事・運動療法の実践度、他の薬剤との併用などによって個人差が大きいため一概には言えません。一般的に、空腹時血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の改善効果が期待できます。

体重(痩せる)への影響とダイエット目的での使用

メトホルミンはインスリン分泌を刺激しないため、他の糖尿病薬に比べて体重が増加しにくい、あるいは体重がわずかに減少する傾向があることが報告されています。

しかし、これはあくまで2型糖尿病治療における副次的な特徴です。メトホルミンは痩せ薬(ダイエット薬)ではありません。 美容やダイエット目的で、医師の診断なく安易に使用することは、重篤な副作用を招く危険性があり、絶対にやめてください。

効果時間

服用後、数時間で効果が現れ始め、血中濃度は2〜4時間程度で最大になります。1日複数回服用することで、24時間にわたって安定した効果が持続するように設計されています。

服用を忘れたらどうすればいい?

薬の飲み忘れは誰にでも起こりうることです。慌てずに以下の通り対処してください。

  • 気づいた時点ですぐに1回分を服用する。
  • ただし、次の服用時間が近い場合(例:次の食事が2〜3時間後に迫っているなど)は、忘れた分は服用せず、次の時間に1回分だけを服用する。
  • 絶対に2回分を一度にまとめて飲まないでください。

判断に迷った場合は、かかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。

メトホルミンの種類(徐放錠など)

メトホルミンには、通常の錠剤のほかに「徐放(じょほう)錠」というタイプがあります。これは、薬の成分がゆっくりと時間をかけて放出されるように設計された製剤です。

徐放錠は1日1回の服用で効果が持続するため、飲み忘れを防ぎやすいというメリットがあります。また、血中濃度が緩やかに上昇するため、消化器系の副作用が軽減されることも期待できます。

服用に関するよくある質問

Q. メトホルミンを飲んでいれば、食事制限はしなくてもいいですか?

A. いいえ、食事療法と運動療法は糖尿病治療の基本です。メトホルミンはあくまで治療の補助であり、薬を飲んでいるからといって食事制限や運動が不要になるわけではありません。バランスの取れた食事と適度な運動を続けることが大切です。

Q. ジェネリック医薬品はありますか?

A. はい、メトホルミンには多くのジェネリック医薬品(後発医薬品)があります。有効成分は先発医薬品と同じで、効果や安全性も同等とされています。

Q. いつまで服用を続ける必要がありますか?

A. 2型糖尿病は生活習慣と深く関わる慢性的な疾患であり、多くの場合、長期にわたる治療が必要です。自己判断で服用を中止すると血糖値が再び悪化する可能性があるため、必ず医師の指示に従ってください。


免責事項

本記事は、メトホルミンに関する一般的な情報を提供するものであり、医学的なアドバイスに代わるものではありません。治療方針や薬の服用に関しては、必ずご自身の医師や薬剤師の指導に従ってください。本記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、当サイトは一切の責任を負いかねます。

[引用元1] 厚生労働省 メトホルミン含有製剤の適正使用に関するRecommendations https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000534725.pdf
[引用元2] 日本糖尿病協会 ビグアナイド薬の適正使用に関する Recommendation http://www.nittokyo.or.jp/modules/information/index.php?content_id=23