メトホルミン 副作用を徹底解説!知っておくべき症状・リスク・対処法

メトホルミンは、2型糖尿病の治療において世界中で広く使用されている基本的な薬です。血糖値を安定させる効果が期待できる一方で、「メトホルミンの副作用」について不安を感じている方も少なくありません。特に、服用を始めたばかりの時期は、体の変化に戸惑うこともあるでしょう。

この記事では、メトホルミン服用中に起こりうる副作用について、具体的な症状や原因、ご自身でできる対処法、そして特に注意が必要なケースまで、分かりやすく解説します。副作用を正しく理解することは、安心して治療を続け、薬の効果を最大限に引き出すための第一歩です。

メトホルミンとはどのような薬か?

メトホルミンは、「ビグアナイド薬」という種類に分類される2型糖尿病の治療薬です。主な働きは以下の3つです。

  • 肝臓で糖が作られるのを抑える
  • 筋肉などでインスリンの効きを良くし、ブドウ糖の利用を促進する
  • 小腸からのブドウ糖の吸収を穏やかにする

インスリンの分泌を直接刺激するわけではないため、メトホルミン単独の服用では低血糖を起こしにくいという特徴があり、2型糖尿病治療の第一選択薬として位置づけられています。

メトホルミン 副作用の種類と主な症状

メトホルミンの副作用は、比較的起こりやすいものから、頻度はまれでも重篤なものまで様々です。代表的な副作用を理解しておきましょう。

消化器系の副作用(吐き気、下痢、腹痛など)

メトホルミンの副作用として最も多く見られるのが、吐き気、下痢、腹痛、食欲不振、便秘、お腹の張りといった消化器系の症状です。

メトホルミン服用初期に多い消化器症状

これらの消化器症状は、特に服用を開始した初期や、薬の量を増やしたときに現れやすい傾向があります。これは、体が薬に慣れる過程で起こる一過性の反応と考えられています。

消化器症状の軽減方法と対処

多くの場合、薬の服用を続けることで自然に症状は軽快していきますが、以下のような工夫で症状を和らげることができる場合があります。

  • 食直前や食事中に服用する: 空腹時よりも胃への負担が軽減されます。
  • 少量から始め、徐々に増量する: 医師の指示のもと、体が慣れる時間を作りながら目標の服用量を目指します。

症状が辛い場合は、自己判断で服用を止めずに、まずは医師や薬剤師に相談してください。

副作用はいつまで続く?期間について

消化器症状が続く期間には個人差がありますが、一般的には服用開始から1〜2週間程度で体が薬に慣れ、症状が落ち着くことが多いです。しかし、症状が長く続いたり、日常生活に支障をきたすほど強かったりする場合は、我慢せずに医療機関に連絡しましょう。

重大な副作用:乳酸アシドーシス

メトホルミンの副作用の中で、最も注意が必要なのが「乳酸アシドーシス」です。頻度は非常にまれですが、発症すると命に関わる可能性がある重篤な状態です。

乳酸アシドーシスとは、体内に乳酸という物質が異常に蓄積し、血液が酸性に傾いてしまう状態を指します。

乳酸アシドーシスの初期症状と危険な兆候

乳酸アシドーシスの初期症状は、風邪や胃腸炎と似ているため注意が必要です。

  • 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状
  • 倦怠感、筋肉痛、手足の震え
  • 息苦しさ、過呼吸

これらの症状が現れた場合は、単なる副作用だと自己判断せず、乳酸アシドーシスの可能性を疑うことが重要です。

乳酸アシドーシスを起こしやすい原因とリスク因子

以下のような状態では、乳酸アシドーシスのリスクが高まります。

リスク因子 具体例
腎機能障害や肝機能障害 腎臓病、肝臓病など
脱水状態 激しい下痢や嘔吐、水分摂取不足
過度のアルコール摂取 大量の飲酒
心臓や肺に重い病気 重度の心不全、呼吸不全など
高齢者 一般的に腎機能や肝機能が低下しやすい
特定の医療処置 手術前後、ヨード造影剤を使用する検査の前後

乳酸アシドーシスが疑われる場合の対応

万が一、上記のような初期症状が現れた場合は、直ちにメトホルミンの服用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。早期の対応が極めて重要です。

その他の副作用

上記以外にも、以下のような副作用が報告されています。

ビタミンB12欠乏

メトホルミンを長期間服用していると、腸からのビタミンB12の吸収が妨げられ、体内のビタミンB12が不足することがあります。ビタミンB12が欠乏すると、手足のしびれや痛み(末梢神経障害)や貧血の原因となる可能性があります。定期的な血液検査でチェックすることが望ましいです。

低血糖(単剤で使用する場合)

前述の通り、メトホルミン単独では低血糖は起こしにくいとされています。しかし、他の血糖降下薬(特にSU薬やインスリン製剤)と併用している場合や、食事を抜いたり、激しい運動をしたりした場合には、低血糖(冷や汗、動悸、手の震えなど)が起こる可能性があります。

味覚異常や倦怠感

金属のような味を感じる「味覚異常」や、原因のはっきりしない「倦怠感」が起こることも報告されています。

メトホルミンの副作用が起こりやすい人・ケース(禁忌・注意)

安全にメトホルミンを使用するためには、副作用のリスクが高まる状態を知っておくことが大切です。

メトホルミンを服用できない人(禁忌)

以下に該当する方は、原則としてメトホルミンを服用できません。乳酸アシドーシスのリスクが非常に高いためです。

  • 腎機能や肝機能に障害がある場合
  • 心臓や肺に重い病気がある場合
  • 脱水状態やシックデイ(発熱、下痢、嘔吐などで食事ができない状態)
  • 造影剤を使用する検査を受ける場合(検査前後の一定期間)
  • 重症感染症、ショック、低酸素血症を伴う状態

メトホルミン服用中に注意すべきこと

併用注意の薬

一部の利尿薬やステロイド薬、解熱鎮痛薬(NSAIDs)など、併用することで血糖値に影響を与えたり、腎機能に影響して副作用のリスクを高めたりする薬があります。現在服用中の薬(市販薬やサプリメントを含む)は、すべて医師や薬剤師に伝えるようにしましょう。

アルコールとの関係

アルコールは乳酸の代謝を妨げ、乳酸アシドーシスのリスクを著しく高めます。メトホルミン服用中は、過度のアルコール摂取は絶対に避けてください。

高齢者の服用に関する注意

高齢の方は、自覚症状がないまま腎機能が低下していることがあります。そのため、少量から開始するなど、特に慎重な投与が必要です。

メトホルミン 副作用が出た時の対処法

副作用が疑われる症状が出た場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

症状が軽度の場合の自己対処

服用初期の軽い吐き気や下痢など、我慢できる程度の症状であれば、まずは様子を見てもよい場合があります。食事と一緒に服用するなどの工夫で改善することもありますが、症状が続く場合は医師に相談しましょう。

症状が改善しない・悪化する場合の対応

消化器症状が改善しない、または日常生活に支障が出るほど悪化している場合は、我慢せずに医療機関を受診してください。また、乳酸アシドーシスを疑う症状(激しい吐き気や腹痛、筋肉痛、息苦しさなど)が見られた場合は、夜間や休日であっても、直ちに救急外来を受診する必要があります。

医師や薬剤師への相談タイミング

「いつもと違う」「これって副作用かな?」と少しでも不安に感じた時が相談のタイミングです。些細なことだと思わずに、かかりつけの医師や薬局の薬剤師に連絡してください。

服用量の調整や薬の中止について

副作用が出たからといって、ご自身の判断で薬の量を減らしたり、服用を中止したりしないでください。血糖値がコントロールできなくなるだけでなく、急な中断が体に悪影響を及ぼす可能性もあります。薬の調整は必ず医師の指示のもとで行いましょう。

メトホルミンの副作用に関するよくある質問(Q&A)

Q. メトホルミンは体に悪い薬ですか?

A. いいえ、そのようなことはありません。メトホルミンは適切に使用すれば、非常に有効で安全性の高い薬です。長年にわたる使用実績があり、2型糖尿病治療において重要な役割を担っています。副作用のリスクを正しく理解し、医師の指示通りに服用することが大切です。

Q. メトホルミンで体重は減りますか?痩せるのは副作用ですか?

A. メトホルミンには、他の多くの糖尿病薬と異なり「体重を増加させにくい」、あるいは「体重がやや減少する」という作用が報告されています。これはインスリンの効きを改善するなどの薬理作用によるもので、一般的に「副作用」とは区別されます。ただし、メトホルミンは痩せるための薬(痩せ薬)ではありません。あくまで糖尿病の治療薬です。

Q. メトホルミンの一部ロットが回収されたのはなぜですか?

A. 過去に、メトホルミン製剤の一部から、製造過程で意図せず生成される発がん性物質(N-ニトロソジメチルアミン:NDMA)が管理基準を超えて検出され、自主回収された事例がありました。現在、市場に流通している製品は、国の厳格な基準をクリアしたものであり、安心してご使用いただけます。

Q. メトホルミンは市販されていますか?

A. いいえ、メトホルミンは医師の診断と処方が必要な「医療用医薬品」であり、薬局やドラッグストアで市販されていません。海外からの個人輸入などによる安易な使用は、健康被害のリスクが非常に高いため絶対にやめてください。

まとめ:メトホルミン 副作用を正しく理解し、安全に使用するために

メトホルミンは、2型糖尿病治療における信頼性の高い薬ですが、他の薬と同様に副作用の可能性があります。特に多いのは服用初期の消化器症状ですが、その多くは時間とともに軽快します。一方で、頻度はまれでも「乳酸アシドーシス」という命に関わる重篤な副作用があることも忘れてはなりません。

メトホルミンの副作用を正しく理解し、リスクが高まる状況(脱水や過度の飲酒など)を避けることが、安全な治療の鍵となります。そして何よりも大切なのは、体調に少しでも異変を感じたら、自己判断せずに、かかりつけの医師や薬剤師に速やかに相談することです。専門家と連携しながら、安心して治療を続けていきましょう。


免責事項:
本記事は、メトホルミンの副作用に関する一般的な情報を提供するものであり、医学的なアドバイスに代わるものではありません。治療や薬に関する具体的な判断は、必ず医師や薬剤師にご相談ください。また、本記事の作成にあたり参照した情報源のリストは、現在の形式では提供できません。