顔のイボの種類とは?原因・見分け方・治療法を皮膚科医が徹底解説

ふと鏡を見たとき、顔に今までなかった「できもの」を見つけて、ドキッとした経験はありませんか? 「これってイボ?」「どんどん大きくなったらどうしよう」「自分で取れるの?」など、様々な不安がよぎるかもしれません。

実は、一般的に「顔のイボ」と呼ばれているものには、医学的なイボから、シミが盛り上がったようなものまで、顔のイボには様々な種類があります。見た目が似ていても、原因や対処法は全く異なります。間違ったケアは、かえって症状を悪化させたり、跡を残してしまったりする原因にもなりかねません。

この記事では、顔にできるイボやできものの種類、それぞれの原因、良性か悪性かの見分け方のポイント、そして皮膚科で行われる専門的な治療法まで、詳しく解説していきます。気になる顔のできものについて正しく理解し、適切な対処法を知るための一助となれば幸いです。

医学的な「イボ(尋常性疣贅)」とは?

まず、医学的に「イボ」と診断されるものは、正式には「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」と呼ばれます。これは、後述する「老人性イボ」などとは異なり、ウイルス感染が原因で起こる皮膚の病気です。

顔にできる尋常性疣贅の特徴

顔にできる尋常性疣贅には、以下のような特徴があります。

  • 見た目: 皮膚の表面が少し盛り上がり、ザラザラ・ブツブツしている。
  • 色: 肌色〜薄い褐色。
  • 特徴: よく見ると、黒い点々(血栓ができた毛細血管)が見えることがある。
  • 場所: 額やあご、口周りなど、ひげ剃りなどで細かい傷がつきやすい場所にできることがある。

初めは平らですが、徐々にドーム状に盛り上がってくることもあります。痛みやかゆみはほとんどありません。

尋常性疣贅の原因と感染経路

尋常性疣贅の直接的な原因は「ヒトパピローマウイルス(HPV)」というウイルスです。

このウイルスが、皮膚にあるごく小さな傷口から侵入し、表皮の細胞に感染して増殖することでイボが形成されます。ヒトパピローマウイルスには多くの型があり、イボができる場所や形状に関係しています。

主な感染経路

  • 自分のイボを触った手で、他の場所を触ることで感染が広がる(自家接種)。
  • プールや公衆浴場など、素足で歩く場所で足の裏に感染する。
  • 皮膚の接触によって、他の人からうつる可能性がある。

免疫力が低下していると、感染しやすくなったり、数が増えたりすることがあります。

顔にできやすい「イボのようなできもの」の種類

多くの方が「顔のイボ」として悩んでいるのは、実はウイルス性ではない、以下のような「できもの」であることがほとんどです。これらはウイルスが原因ではないため、他人にうつることはありません

脂漏性角化症(老人性イボ)とは

最も代表的なものが「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」です。別名「老人性イボ」とも呼ばれ、加齢に伴って現れる良性の皮膚腫瘍です。

脂漏性角化症の特徴(見た目、色、サイズ)

  • 見た目: はじめは平らなシミのように現れ、徐々に盛り上がってくる。表面はザラザラ、カサカサしていることが多い。
  • 色: 明るい茶色〜黒褐色まで様々。
  • 形: 円形や楕円形が多い。
  • サイズ: 数ミリのものから、数センチになるものまである。
  • 場所: 顔、こめかみ、首、手の甲、体など、紫外線が当たりやすい場所にできやすい。

かゆみを伴うこともありますが、通常は無症状です。急に数が増えたり、強いかゆみが出たりする場合は、内臓の病気が隠れている可能性(レーザー・トレラ徴候)も稀にあるため、皮膚科医に相談しましょう。

脂漏性角化症の原因(加齢、紫外線)

脂漏性角化症の主な原因は、以下の2つです。

  • 加齢: 年齢を重ねるにつれて皮膚のターンオーバーが乱れ、表皮の細胞が異常に増殖することで発生します。
  • 紫外線: 長年にわたって紫外線を浴び続けることで、皮膚がダメージを受け、発生のリスクが高まります。

遺伝的な体質も関係すると考えられています。

軟性線維腫(スキンタッグ、アクロコルドン)とは

首によくできる「首イボ」として知られていますが、顔やまぶた、脇の下などにもできる柔らかいできものです。医学的には「軟性線維腫(なんせいせんいしゅ)」と呼ばれ、大きさによって「アクロコルドン」や「スキンタッグ」とも呼ばれます。

軟性線維腫の特徴

  • 見た目: 1〜3mm程度の小さく柔らかい、皮膚から飛び出したような形状。
  • 色: 肌色〜褐色。
  • 場所: まぶた、首、脇の下、胸、鼠径部など、皮膚が薄く摩擦が起きやすい場所に多発することがある。

軟性線維腫の原因

はっきりとした原因は不明ですが、以下の要因が関係していると考えられています。

  • 加齢
  • 摩擦(衣類やネックレスなどによる)
  • 紫外線
  • 体質・遺伝
  • 肥満妊娠をきっかけに増えることもあります。

その他の顔のできもの(色素性母斑、粉瘤など)

イボと間違われやすい顔のできものには、他にも以下のようなものがあります。

  • 色素性母斑(ほくろ): メラニン色素を作る細胞(母斑細胞)が増殖したもの。
  • 粉瘤(アテローム): 皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に垢や皮脂が溜まったもの。中央に黒い点(開口部)が見えることもあります。
  • 稗粒腫(はいりゅうしゅ/ひりゅうしゅ): 目の周りによくできる、白くて硬い1〜2mmの小さな粒。

顔のイボ(できもの)の良性・悪性の見分け方

顔のできものを見つけたとき、最も心配なのは「悪性ではないか?」ということでしょう。ほとんどは良性ですが、ごく稀に皮膚がんの初期症状である可能性もあります。自己判断は禁物ですが、チェックポイントを知っておくことは大切です。

【注意】
ここで紹介する見分け方はあくまで一般的な目安です。最終的な診断は必ず皮膚科専門医による診察が必要です。

良性の特徴

一般的に、良性のできものには以下のような特徴が見られます。

  • 形が左右対称に近い
  • 境界線がはっきりしている
  • 色が均一
  • 大きさにほとんど変化がないか、変化が非常にゆっくり

悪性の可能性がある場合の注意点

下記のような特徴が見られる場合は、皮膚がん(特に悪性黒色腫(メラノーマ)や基底細胞がんなど)の可能性も否定できません。早急に皮膚科を受診してください

  • 形が左右非対称になった
  • 境界がギザギザして、不明瞭になってきた
  • 色がまだらで、濃淡が混ざっている
  • 直径が6mm以上と大きい、または急に大きくなってきた
  • 盛り上がりが出てきた、形が変わった
  • 出血しやすい、かさぶたができる、ただれる

これらのサインは「ABCDEルール」として知られており、皮膚がんのセルフチェックの参考になります。少しでも当てはまる、あるいは疑わしいと感じたら、迷わず専門医に相談しましょう。

顔のイボ(できもの)を自分で取るのは危険?市販薬の効果は?

気になる顔のイボを「自分で取りたい」と思うかもしれませんが、その行為は非常に危険です。

自分で取るリスク

ハサミや爪切りで切ったり、針でつついたり、無理に剥がしたりする自己処理は絶対にやめてください。

  • 細菌感染: 傷口から細菌が入り込み、化膿してしまう。
  • 跡が残る: 炎症後色素沈着や、ケロイドのような目立つ傷跡になる可能性がある。
  • ウイルスを拡散: 尋常性疣贅の場合、ウイルスを周りに撒き散らし、イボがさらに増える原因になる。
  • 悪性腫瘍の見逃し: もし悪性だった場合、刺激を与えることで進行を早めたり、診断の機会を逃したりする最も危険なリスクがある。

市販薬の種類と注意点

ドラッグストアでは、イボ用の塗り薬や飲み薬(ヨクイニン)が販売されています。しかし、これらの使用には注意が必要です。

  • 効果があるのはウイルス性のイボだけ: サリチル酸などを含む市販の塗り薬は、皮膚を柔らかくして溶かす作用があり、尋常性疣贅を対象としています。脂漏性角化症や軟性線維腫には効果がありません
  • 顔への使用は非推奨: 顔の皮膚は薄くデリケートなため、市販薬の使用でかぶれたり、健康な皮膚まで傷つけてしまったりするリスクがあります。多くの製品が「顔面への使用は避けること」と注意書きをしています。

顔のできものに対して、自己判断で市販薬を使用するのは避け、まずは種類を特定するために皮膚科を受診することが最も安全で確実な方法です。

顔のイボ(できもの)の皮膚科での治療法

皮膚科では、専門医が正確な診断を下した上で、最も適した治療法を提案してくれます。

診断と治療方針

診察では、まず視診でできものの状態を確認します。必要に応じて「ダーモスコピー」という拡大鏡を使って詳細に観察し、良性か悪性かを判断します。この診断に基づいて、できものの種類、大きさ、場所、そして患者さんの希望を考慮しながら、治療方針を決定します。

主な治療法(液体窒素、レーザー、切除など)

顔のイボ(できもの)の種類によって、治療法は異なります。

治療法 対象の主な例 特徴 保険適用
液体窒素凍結療法 尋常性疣贅 -196℃の液体窒素で凍結させる治療。数回の通院が必要なことが多い。痛みや水ぶくれ、色素沈着のリスクがある。 あり
炭酸ガス(CO2)レーザー 脂漏性角化症、軟性線維腫など レーザーでできものを蒸散させて除去する。傷跡が残りにくく仕上がりが綺麗。1回で終わることが多い。局所麻酔を使用。 なし
外科的切除 大きなできもの、悪性が疑われるもの メスで切除し、縫合する。切除した組織を病理検査に出して確定診断ができる。抜糸が必要。 あり

治療費用について

治療費用は、保険が適用されるか、自費診療になるかで大きく異なります。

  • 保険適用の場合(液体窒素など): 3割負担で1回の治療につき数千円程度が目安です(診察料や薬代を含む)。
  • 自費診療の場合(レーザーなど): クリニックや、できものの大きさ・数によって費用は変動します。一般的に、数mmの小さなものであれば1つあたり5,000円〜15,000円程度が相場ですが、事前にクリニックのウェブサイトで確認したり、問い合わせたりすることをおすすめします。

顔のイボ(できもの)の予防と対策

できてしまったイボを治療することも大切ですが、日頃から予防を心がけることも重要です。

種類別の予防策

  • 尋常性疣贅(ウイルス性イボ)の予防:
    皮膚を清潔に保つ。
    ひげ剃りなどで肌を傷つけないように注意する。
    できてしまったイボは、触ったりいじったりしない。
  • 脂漏性角化症(老人性イボ)の予防:
    最大の予防策は紫外線対策です。季節を問わず、日焼け止めを塗り、帽子や日傘を活用しましょう。
  • 軟性線維腫(スキンタッグ)の予防:
    ネックレスなどによる物理的な摩擦を避ける。
    紫外線対策も有効です。

日常生活での注意点

  • 保湿: スキンケアでしっかりと保湿し、肌のバリア機能を正常に保つ。
  • 生活習慣: バランスの取れた食事、質の良い睡眠を心がけ、免疫力を維持する。
  • ストレス管理: 過度なストレスは免疫力低下につながるため、上手に発散する。

まとめ:気になる顔のイボ(できもの)は皮膚科へ相談を

顔にできる「イボ」には、ウイルス性の「尋常性疣贅」から、加齢や紫外線が原因の「脂漏性角化症(老人性イボ)」や「軟性線維腫」まで、様々な種類があることを解説しました。

それぞれの原因や対処法は全く異なり、中には悪性の皮膚疾患が隠れている可能性もゼロではありません。

顔のできものを自分で取ったり、自己判断で市販薬を使ったりするのは非常に危険です。気になるできものを見つけたら、まずは皮膚科を受診し、専門医に正確な診断をしてもらうことが、安全で美しい肌を保つための最も確実な第一歩です。一人で悩まず、ぜひ専門医に相談してください。


免責事項:本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。皮膚に異常を感じた場合は、速やかに皮膚科専門医の診察を受けるようにしてください。